« 台風一過 | トップページ | 近世文書の撮影作業 »

2009年10月 9日 (金)

博物館を枯らす?

 先日の事務職員の投稿記事にあるように、博物館の前を通りかかった人だけでなく、学生からも「いつになったら開館するんですか?」とよく質問されるようになってきました。実際、建物の姿は一年近く前からあるので、いつまでたっても開館しないと思われるのも無理はありませんね。

 でも、これには理由があるのです。一般住宅でも同じですが、新築の博物館建築からは、様々な有害物質や水分が、多くの建材から放出されます。いわゆる「新車のにおい」です。これは体質によっては化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因ともなり、現代の社会問題でもあります。博物館の場合、実はその被害を受けるのは人間だけでなく、大切な文化財でもあるのです。

新築の建物では、室内がアルカリ性になる傾向が強く出ます。また、壁紙の糊や、建材の接着剤は、業界では人体に影響のないものという基準で使われますが、100年以上前の古文書や、出土した木製品にはどのような影響が出るか未知数なものもあります。しかも、被害が出てからでは取り返しがつきません。

そこで、美術館・博物館は、建築後1~2年間、エアコンをかけっぱなしにして放置し、こうした物質を出し切ってから資料を搬入します。業界用語ではこれを「枯らす」と言います。当館でも、空っぽの収蔵庫と展示室の空調は、24時間つけっぱなしです。

また、水道やガスなどの配管、電気の配線なども不備がないか、数ヶ月間にわたって慣らし運転してみて確かめます。資料を搬入した後、水漏れ・ガス漏れがあってはたいへんです。

「いつになったら開館するのか?」と思われるかもしれませんが、今は博物館開館のために無くてはならない「枯らし期間」「慣らし運転期間」。ほったらかすのも準備のうちなのです。

…とは言ってもサボっているわけではありません。展示資料の準備、パネル原稿の作成、印刷物の準備、運営面での準備などで、大忙しなのです。

(学芸員)

« 台風一過 | トップページ | 近世文書の撮影作業 »

こぼれ話」カテゴリの記事